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ーーおかしい。夢じゃないなら異世界に飛び込んだとしか考えらんない。目が覚めるたびに顔が変わるなんて……。
榊原は目に映るもの全てに疑念を抱き始める。
夜になり、つるん榊原は外に出た。人目につかない時間帯に少し安心して食材の買い出しにコンビニへ行く。牛乳と弁当、飲み物を目当てに店内を歩くと、聞き覚えのある声に視線を向けた。その声はアルコールの陳列棚にいる。
「何だかどれも高いな」
「コンビニってこんなもんじゃん」
「あっそうだ。これから植田呼ばね? 腹減ったって言えば、アイツならいい店連れてってくれんだろ」
「いいねぇー。早速電話すんべ」
そう言って男たちは何も買わずに出入口へ向かう。榊原は声の主をチラリと見ると、あの高台でやり合った男だとすぐにわかった。
「あっ」
一瞬たじろいだが、今の榊原は榊原ではない。男と目が合うが、何てことない顔で横をスルーされ、男らは出て行った。
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