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「おじさんに助けてもらったから、お詫びのつもりで顔を変えた」
「お詫びって……。君はなに? どうやったらそんなことが出来るんだ?」
「おじさんにだけ言うね。ボク人間じゃないんだ。ここはボクが生まれ育った場所で、家族で棲んでた場所なんだ。けれど山が切りくずされて棲む場所もなくなって、家族もバラバラになっちゃってさ。だからここでずっと待ってんの。お父さんとお母さんとおにいちゃんを。
そんでさぁ、この間ここにすわってたらあんなことがあったじゃーん。いじわるな人ふえたよねー。
おじさん、さいしょの顔が気に入らなくて、なやんでたんでしょ? だからまた別の顔をつけてあげたんだ。
さっきコンビニで男たちに会っても、だいじょうぶだったもんね。よかった」
「バッ……!」
榊原は思い切り怒鳴りつけてやろうと言いかけた。こんな……何が現実かわからない、不安な思いを植えつけられて。
しかし人間ではないとはいえ、子どもらしい発想で自分を助けてくれたことには違いない。少なくともコンビニで男たちに出くわしても、何も起こらずに済んだのも事実。
榊原はふうぅーーっと大きく深呼吸をして、怒りを静かに吐き出した。
「じゃあ、元の顔に戻してくれるかな」
「えっ、だって」
「いいんだ。僕は別に悪いことをしたわけじゃないし、君を助けたときの自分の顔でいたいんだ」
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