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人口抑制策
少子高齢化。十五歳から六十四歳の生産年齢人口の減少による経済成長の減速。社会保障の負担増。
人口減少、高齢化の波に飲み込まれた民自党政権は、子育て支援策を打ち出した。それは『少子化防止策』と呼ばれた。
①月収の約一割の奨励金を児童が十六歳になる年度まで支給する。
②奨励金対象児童は支給期間内の医療費全額免除。
③子供一人につき親の年金を一割加算、ただし加算は三人までとする。
④婚姻の解消(死亡・失踪宣告・離婚)においては養育する嫡出子数を基にする。
⑤非嫡出子は嫡出子に準ずる。
政策は功を奏したが、政府の予想を上回る人口爆発を起こした。日本は思いもよらぬ事態に見舞われることになった。食糧や水のみならず、資源、住宅、雇用などの不足を引き起こし、さらなる経済格差の拡大がもたらされたのだ。
それを受けて西暦2040年5月1日、前代未聞の政策が発動することになる。
『人口抑制策』
①七十歳を迎えた日から、治癒を見込めない延命処置は禁止とする。関与した医師は、その資格を剥奪する。ただし医師による医療を伴わない加療に関してはその限りではない。
年金の加算から急転直下の政策転換だ。年寄りを無駄に生かすな、ということだ。
医療を伴わない加療とは、要するに民間療法なら違法に当たらないということになる。
世代の新陳代謝を促すにはあまりにも無謀な計画だった。しかし政治家、官僚にはそれが及ばないというのが国民の見方だった。
②第二子以降の未成人は年齢性別にかかわらず政府はその身柄を拘束する。
国民をもっとも驚かせた文言だった。民主国家において拘束の二文字は強烈な拒否反応を呼んだ。
詳細については専門家を交えて審議中として、国民に知らされることはなかった。人為的に生殖機能を奪うことか、一定期間自由を束縛することか、それとも存在そのものを……いずれにせよ、財政逼迫に喘ぐ国家には、収容した未成人に無駄飯を食わせる余裕があるとは思えなかった。
海外に逃れた富裕層もいたが、大半の日本人にそれができるはずもなかった。
それは内容こそ違え1979年から2015年まで中国で行われていた“一人っ子政策”を想起させた。
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