1. 発端 -1-

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1. 発端 -1-

 アナウンスの声がターミナルの中を響き渡り、様々な国から来た人間がその中を行きかう。今日も成田空港は活気づいていた。  その雑踏の中を剣持は一人の人物を探している。  今日、ロスから来るはずのFBIの捜査官だ。  顔は写真で何度も確認したから頭に入ってはいるが、それにしても人が多すぎる。剣持は見逃さないよう注意深くあたりを見渡した。  そのとき、剣持の肩をたたく者がいた。  振り返るとサングラスをかけた女性が立っている。  ネイビーのジャケットに同じ色のタイトなスカートをはいた黒髪の女性だ。  「剣持さんですか?」  流暢な日本語で尋ねられる。  「ミス・エッシェンバッハ?」  「YES《はい》」  女性は右手を差し出した。  剣持も右手を差出し、握手をした。  「車を用意しています。荷物はそれだけですか?」  女性の傍らにはスーツケースが一個だけあった。  「はい、必要なものは買いますのでご心配なく。」  にっこりと笑うその表情が魅惑的だった。  剣持は彼女のスーツケースを持つと、先にたって歩きはじめた。
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