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ダーサという呼び名をハンベエが配下の者にそれとなく振れ回していると、この村の長が蒼い顔でレンホーセンの所へ駈けてきた。六十過ぎの枯れ細った村長は汗びっしょりの押っ取り刀だ。
「レンの旦那。一大事だ。人狩りが出た。村の者が十人ばかり掠われた。」
「何だとう。アルハインドのこの村に。」
村長の言葉に、レンホーセンが俄に険しい顔になって立ち上がった。反射的に左手が剣の鞘を掴んでいる。
「人狩り?」
横で聞いていたハンベエがレンホーセンに顔を向けた。
「人を掠って奴隷にして売る輩だ。ハンベエは知らないだろうが、ここいらには普通に居る連中さ。ゴロデリア王国にも似たような連中が居ただろう。白昼堂々じゃ無かったが。しかし、選りに選って俺達アルハインド族のこの村に手を出しやがるとは。敵は何人くらいだ。」
ハンベエに口早に説明する一方で、村長に問い糾すレンホーセン。
「百人くらい居たそうです。三頭立ての馬車に十四、五までの者を押し込んで西の方へ走って行ってるようです。」
村長は額の汗をかきかき答える。
「百か。クソッ、生憎の事に手下は部族の下に帰してる。」
レンホーセンは歯噛みしながら、ハンベエの顔を見た。
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