128人が本棚に入れています
本棚に追加
「ボテクリマの出して来た要求は二つでございます。一つはボテクリマに隣接するポーラ地域の割譲と、今一つは人質として王子を一人差し出す事です。」
「ポーラ地域を丸ごと・・・・・・我が領土の三分の一を丸々・・・・・・戦には負けたくないものじゃ。人質なら、サダナーを行かせれば良いであろう。早々に講和交渉を進めるが良い。」
・・・・・・係る経緯で、フランシテル国の王子サダナーはボテクリマ帝国への人質に送られる事に相成った。
「我が諫言も用いず、ボテクリマ帝国と身の程知らずの戦を行い惨めな敗北を喫した挙げ句降伏か。しかも、その降伏の人質としてこの身が差し出されるとは、何ともこの世は不条理に満ちている。そう思わないか、モッシュ。」
人質としてボテクリマに向かうよう王命を受けたサダナー王子は守り役のモッシュに不満を漏らした。
サダナーはボテクリマとの戦争については反対の立場で、王に諫言を申し出ようと試みて面会を許されず、書面を以てボテクリマを敵として戦う事の不可を上申していた。
王子サダナーは今年十五歳になったばかりの若輩であった。しかも、所謂妾腹で母の身分は低かった。この為王子とは言え、将来王の後継者となる人物とは見られず、富にサダナーが五歳の物心付く頃になるや王と王妃の間に初の男児オーリンが生まれ、それからは世人の軽侮がヒシヒシと身に刺さる思いで過ごして来ていた。
最初のコメントを投稿しよう!