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ハンベエは無言で肯き、佩刀を取った。佩刀に銘が有る。刀名を『ヨシミツ』と言う。その『ヨシミツ』を腰に差して立ち上がり、彼の手下を見回しながら、
「目印は、三頭立ての馬車だな。村長、百人の賊の内、騎馬の者の数は判ってるか?」
と問うた。
「十人に一人くらいだったと。西の方へ去って行ったと聞きました。一時間ほど前の事です。」
「ハンベエ、済まねえ。敵の総数が分からねえから、俺は部族の所へ行って五百人ばかり都合して来る。」
阿吽の呼吸なのであろう。レンホーセンはそう言うと、馬に飛び乗った。
ハンベエとその配下も騎乗し、整列した。サダナーも釣られるように馬上の人となっていた。
お前も来るのか、とはハンベエもその配下も言わない。一蓮托生である。こういう際に尻込みする者は、軽侮の的になるだけである。
「向こうは百人居ますが。」
村長は不安そうにレンホーセンに言った。
「人狩りに遭ったのは不運だったが、このハンベエ殿が偶々居てくれたのはツイていた。お任せして何の心配も無い。武神の生まれ変わりのような御仁だ。」
レンホーセンは村長に胸を叩かんばかりに受け合った。
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