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サダナーはボテクリマの兵士に誘われるように相手側の用意した馬車に向かったが、数歩歩むとやにわに下馬の礼を取っているボテクリマの兵士の一人を突き飛ばし、その馬の手綱を掴んだと見るや背に飛び乗っていた。
「はあっ。」
間髪入れず馬腹を蹴ると、馬は棹立ちもせず一散に駆け出した。
ボテクリマの兵士一党も、フランシテルの一行も、しばし呆然と駆け去って行く馬の尻と人質サダナーの背中を見ていたが、
「逃がすな、追えっ。」
と馬持つ者は馬を走らせ、徒の者は自ら走り出し、今更ながらの大慌てとなった。
既にサダナーの姿は地平の果て、豆粒のように小さくなっている。
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