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二 サダナーはヘンテコ王子
人質引渡の場から逃走したサダナーは南に馬を走らせた。途中馬が疲れ果てて走れなくなると、馬を棄てて更に南に下った。このまま進むとトントシラン国の領域に入る事になる。
トントシラン国は人口五万人、兵士一千人という小国である。近頃、国の支配者が代わっていた。元々はカルローという国王が統べていたのであるが、ある時軍事を司っていた弟のナンドが謀反を起こして国王のカルローも王妃も殺害され国を簒奪されたのであるが、その時十歳であった王女のイザベラが護衛役に導かれて逃げ延び、十有余年の歳月を経て国を取り返したのであった。
イザベラはハンベエというヒョウホウ者と騎馬の民であるアルハインド族の傭兵レンホーセン及びその騎馬傭兵部隊五百騎、ゴロデリア王国特別遊撃隊隊長ヒューゴとその率いる部隊百人の手を借りて、トントシラン国付近の平野で同国兵士一千と戦い、一戦の下にこれを撃破。国内の城に逃げ帰ったナンド及びその妃、更にその王女を追放して、同国の女王の座に就き、イザベラ・ドルフ・トントシランと名乗った。
今はレンホーセンと騎馬傭兵部隊はアルハインド族の下に去り、ヒューゴとゴロデリア王国特別遊撃隊の大部分はゴロデリア王国に帰還して、ハンベエとゴロデリア王国特別遊撃隊の隊士十三名が客分として同国に滞在していた。
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