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「かつての勇者も地に落ちたもんだな」
酒場の店主の無慈悲な言葉とともに思いっきり蹴飛ばされ、俺はゴロゴロと嘔吐物まみれの床を転がった。
不死の森に生息するゾンビどもの臭気を思いだしながら、あれに比べればマシだな、と俺の口から笑みがこぼれた。
「なに笑ってんだ!」
「ごふっ」
ブーツを履いた店主の足が容赦なく俺の脇腹に襲いかかる。
痛みのあまりの声もでず、情けなく口をパクパクさせるしかない俺である。
守護精霊ルミアスの加護があれば、癒しの力で、こんな醜態をさらさずにすんだかもしれない。だが、ないものをねだっても仕方がない。
「ああん!? 聞こえねえぞ。さっさと金を払いやがれ」
罵倒とともに何発も蹴りを入れる店主の姿は、魔王軍におびえていたころとは大違いだ。
「わ、わかったよ。払えばいいんだろ」
俺は懐から、なけなしの銀貨を数枚とりだした。
店主の手がすかさず伸び、銀貨をふんだくる。
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