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――休日に娘と一緒に遊園地へと出掛けた。娘は隣で私と腕を組んで楽しそうに歩いていた。白いリボンがついてる帽子に、白い水玉のレースのワンピースが、どこか清楚な感じで似合っていた。髪を下ろすと若い頃の学生時代の妻を思い出した。
――奏美も似たような服を持っていたな。
隣で娘を見ながら私は不意に思った。美咲と奏美は雰囲気や仕草がどこと無く似ていた。たまにデジャヴかと思う程、似ている時がある。遊園地に着くと美咲はハシャイで私の手を引っ張った。
「ねーねー! パパ、一緒にあれに乗ろうよ!?」
「ん~? メリーゴーランドか。パパはいいよ、外で見てるから美咲は気にせずに乗って来なさい」
「やだ! 美咲は葉月パパと一緒に乗りたいの!! ねぇ、いいでしょ!?」
「コラコラ、そんなに腕を強く引っ張るな。パパの腕が抜けるだろ?」
「じゃあ、一緒に乗ってくれる?」
「ああ、わかったよ。降参だ。よし、あのカボチャの馬車に乗ろうか?」
「うん! 葉月パパ、だ~い好き!」
娘が駄々をこねて言ってくるものだから、私は降参すると、一緒にメリーゴーランドに乗った。間もなくしてメリーゴーランドが回転して回った。目の前で娘は楽しそうにしていた。私は美咲を見ながら学生時代の妻とのデートをふと思い出した。
奏美も一緒にメリーゴーランドに乗った時、無邪気に笑ってハシャイでたな。美咲を見ていると、妻との学生時代が次々に甦った。一人で遠くを見ながら黄昏ていると、娘が目の前の話しかけてきた。
「メリーゴーランド終わっちゃったね! じゃあ次はお化け屋敷に行こう! ほら、葉月パパ早く早く!」
「ハイハイ、美咲はせっかちだな。そう言う所はママにソックリだ」
「パパ、私ママに似てるかな?」
「ああ、そうだな。時々な…――」
そう言って頷くと美咲がジッと見てきた。
「私、ママなんかじゃないよ。美咲は美咲だよ。パパはちゃんと私のこと見てくれてる?」
「ん…? ああ、そうだな……。美咲は美咲だ。ママなんかじゃないよな。自分でも何言ってるんだろうなパパは…――」
娘にジッと見つめられると、急に目を反らして頭をかいた。時々、娘の視線に困惑する時がある。それはまさにこの瞬間だった。目を反らするとその場凌ぎで適当に返事をした。すると突然、強めの風が吹くと娘の被っていた帽子が風に吹かれて飛んだ。
「あっ……!」
「コラ、待て!」
風に飛んだ帽子を追いかけると、近くの木の枝に止まった。私は、その帽子をジャンプしてキャッチすると娘に手渡した。
「ホラ、美咲! ちゃんと帽子を被りなさい!」
「ありがとうパパ…――!」
娘は目の前で手渡された帽子を受け取ると、何故か顔が赤くなっていた。そして、帽子を持ちながら照れ隠しした。その仕草が何だか急に妻を思い出す。それにこの帽子をよくみると、奏美が持っていた帽子に似ていた。
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