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直ぐに10年来の敵を視るような顔になり、僕を睨み付けながら彼女は言いいだした。
「解ってないみたいだから、敢えて言うわ。
アナタのそれはただ私に対して欲情しているだけよ」
「それは違うよ。僕の心はどうしょうもなく君に惹かれてるもの」
「だから、それはただの男の本能だわっ!
それを愛情だって勘違いしてるだけよっ!」
彼女の忠告を全く無視して、更に動揺することなく応えた僕。
その態度が気に入らなかった彼女は大声を上げた。
やっぱり彼女は優しい。だから好きで愛しいのだ。
「それ、わかってて言ってるよね?」
「なにを言って…………」
だから僕は努めて冷静に問う。すると彼女は言葉を詰まらせた。
「僕は君のそういう優しい所が昔から大好きなんだよ」
「だから、アナタのそれは…………」
「そんな人が独りだなんて、僕は絶対にイヤだ」
「そんなの大きなお世話よ。何度も言うけど__」
「欲情してるだけだろって言いたいんだろ? 欲情してること、それ自体は否定しないよ」
「ほらやっぱり」
彼女は何とかして、断る理由を探している。
勿論、彼女が僕のことを嫌いなら直ぐにでも諦める。
でも、そうじゃないなら、僕はもう絶対に引かない。
そう決めたから。
「それだって、君の魅力の一つだって言いたいけど、でもそんなのだって関係無いってことは君が一番わかってるんじゃない?」
「…………」
「だって僕は……ずっと昔から君のことが好きだったんだから」
「そんなの…………」
信じられないというのだろう。
それはそうだろう、逆の立場だったら僕だってそうなる。
「でもさ。例え君が魔女でもバンパイヤだったとしても、間違いなく君を好きになった。
きっと僕は君に出会った瞬間に恋に落ちて、すぐに好きになる」
再び彼女は俯き、ゆっくりと絞り出すように言った。
「……だから、その感情も、その気持ちもこの体に対してでしょ?
この大きな胸にお尻。自分で言うのもなんだけど、容姿もかなりいい。いや、良くなったし。
しかも可愛いとか綺麗じゃなくて、男好きのする__」
「何度だって言うよ。それだって君の魅力の一部でしょ?」
僕がここまで食い下がるとは思っていなかったのか、彼女の動揺は激しい。
つっかえながら、何とか言葉を繋げているといった感じだ。
「……それは、愛じゃない、でしょ?」
「まだ言うの? 僕が欲情しているだけだって? 確かに僕が君に欲情しているのは間違いない」
「なら__」
「諦めろって? 僕は絶対に君を諦めたりしないよ」
「な、んで…………」
僕は断言できる。
「僕は君無しじゃ生きていけない」
彼女の特性のことも、体質のことも知った。
それでも、彼女への想いは消えなかった。
それどころかか増すばかりだ。
君が傍にいなくても、君の姿が見えなくても、君のことが頭から離れない。
「気付くと、君の事を考えてる」
「だからって、一緒にいたら…………」
そんなことは百も承知だ。
そんな覚悟はとっくに済ませている。
「自分の命の使い方は自分で決める」
どんなことがあったとしても、僕は彼女の傍にいたいし、
君が欲しい。
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