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久しぶりに忍さんのお店に来ました
その日、莉王たちは久しぶりに忍の店を訪れていた。
此処のところ忙しくてなかなか来られなかったのだが、忍に呼ばれ、会社帰りに立ち寄ったのだ。
「疲れてるね~、莉王ちゃん」
カウンターで溜息をつく莉王を見て、忍が笑う。
「いや~、お義母さんのいない允さんとの生活がこんなに大変だとは思いませんでした」
そう莉王が愚痴ると、横に座る允が、
「……俺がなんにもしないみたいに聞こえるからやめろ」
と文句を言ってくる。
いや、そうではない。
そうではないのだ。
允さんはよくやってくれている。
「允さんの実家にいるときは、お義母さんがメニュー決めてくれてたじゃないですか。
允さんがなにが好きか嫌いかとか熟知してるし。
いつも、これ好きかなあ、あれ好きかなあとか、いろいろ迷って。
メニュー考えるのにも時間かかっちゃって。
掃除も、允さん几帳面だから。
私の掃除したところ、雑だな~とか思って、実は腹立ててるんじゃないかなとか思ったら落ち着かないし」
でも、と莉王は拳を握りしめ、言った。
「一番の困ったことは、家にずっと允さんがいることなんですっ」
允どころか、近くに座っていたラガーマンたちにまで、ええっ? という顔をされてしまった。
「なに倦怠期の夫婦みたいなこと言ってんの」
と言う忍に、莉王は力説する。
「だって、疲れるじゃないですかっ」
允の顔が蒼白になった。
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