鼓舞の言葉

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 間もなく戦が始まる。  本気の華侯焔と向き合い、勝たなければいけない。  少しでも冷静になってしまえば、力の差に呑まれて動けなくなりそうだ。  もう華侯焔は待ってはくれない。  絶対に負けはしないと胸の奥に熱を灯し、俺は体の中にこれでもかと空気を取り込み、声と共に吐き出す。 「今日、すべてを出し尽くして欲しい。力の温存も、明日のことも、何も考えなくていい。ただ、今だけに力を注いでくれ」  そして、華侯焔に届けるつもりで、俺は決意を吼えた。 「俺は、この世界の覇王になる!」  口に出した瞬間、兵たちがオォォォォーッ! と声を上げる。  辺りがビリビリと震える。一瞬で熱気が立ち込め、その熱が俺の体の芯まで届く。  誰もが俺の鼓舞に沸き立つ中、羽勳が俺を見上げながら拝手する。 「そのお言葉、心待ちにしておりました。必ず我らと同胞たちとで志馬威を追い詰めてみせます!」 「頼りにしてるぞ。お互いに本懐を遂げよう」  俺は『至高英雄』の覇者。この世界の住人に変装している羽勳たち魔物は、志馬威に囚われている魔王の奪還。  目的は違うが、お互いが協力すれば利は大きい。羽勳たちにとっても、これが千載一遇の好機だ。  目に力を込め、鼓舞で熱くなった眼差しを俺にぶつけながら羽勳は「はい!」と応えてくれた。
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