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才明の話が終わらぬ内に侍女たちは俺の椅子を用意したり、空いた皿を片付けたりと手際よく動いてくれる。
華候焔はもう一度ため息をついてから、侶普に目配せして「出るぞ」と声をかける。武人らしい強面を変えず、侶普は短く頷いて立ち上がり、澗宇に深々と頭を下げてから部屋を出ていく。
そして俺と澗宇以外の人間が部屋を出て行く中、華候焔が突然キョロキョロを辺りを見渡し、部屋の隅へと向かって白い何か――布切れのフリをしていた白澤を掴んで肩にかけていた。
「コラ長毛玉、野暮なことするな」
「あっ、ひどいじゃないですかー! いざという時に助けられるよう、隠れてたのにー!」
「対等じゃないだろうが。澗宇が完全に無防備になって腹割って話そうとしてるっていうのに、盗み聞きするなんざやめろ」
「そんなつもりはないですー! ってか離して下さいー! アナタに担がれるぐらいなら自分で動きますー」
「話が終わるまで、俺がしっかりと抑えておいてやる。ありがたく思え」
相変わらずのやり取りをしながら去っていく華候焔と白澤を見送っていると、プッ、と澗宇から吹き出す声がした。
「お二人はいつもあのような感じなのですか?」
「あ、ああ。わざわざ足を運んでくれたというのに、見苦しいところを見せて申し訳ない」
「それだけ彼らが活き活きとしているということの証ですから……華候焔が自由に過ごせているようで嬉しいです」
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