澗宇との対面

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 どこか嬉しげながらも澗宇から切なさが漏れる。  パタン、と扉が閉まったことを確かめてから俺は澗宇に顔を向け、隣の椅子へ腰かけた。 「こうして話し合いができる領主と会えて、嬉しく思う。やはり領主である以上、君の姿も現実と同じなのか?」  俺の問いに澗宇が小さく首を横に振る。 「僕は少し事情が特殊で、現実とは容姿が異なっています。一応、年齢や基本的なものは同じなのですが……」 「それはいったい?」 「詳しいことは僕の口から言えません。でも、あっちで『至高英雄』のことを調べていけば、遠くない内に分かると思います」  あっち、というのは現実のことだろう。  ゲームのことを調べていけば彼に繋がるということは、澗宇はゲームを作った所と繋がりがあるのかもしれない。  最弱なのにゲーム内第三位の規模を持つ領主。  ただ者ではないことは間違いないだろうと思っていると、澗宇は俺の目を真っ直ぐに見つめながら告げてきた。 「誠人さんがこの世界へ来た時から、その活躍に注目していました。そして本気でこのゲームを終わらせようとしていることにも気づいています」  ――ガッ。唐突に澗宇は俺の右手を両手で掴み、ギュッと握り込んだ。 「僕はずっと、このゲームを終わらせてくれる人を待っていました……誠人さんがこの世界の頂点に立ち、負けたプレイヤーを解放してくれる日を迎えるためなら、僕はどんな協力も惜しみません」
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