華候焔との繋がり

1/2
前へ
/568ページ
次へ

華候焔との繋がり

 負けたプレイヤーの解放――一瞬、耳障りの良い言葉を並べ、俺を油断させようとしているのだろうかと疑ってしまう。  だが澗宇の澄み切った瞳に力強さを見出し、これが彼の本音なのだと確信した。  本音には本音で返そう。  俺は澗宇の眼差しを真っ直ぐに受け止め、素直な疑問をぶつける。 「領土の規模や抱えている武将の数を考えれば、俺よりも澗宇のほうが総合力は上だと思う。なぜ自ら頂点を目指さないんだ?」 「……頂点を目指すには、僕という人間はあまりに無力なんです。武将の数が多いのは、出来る限り戦いを望まないプレイヤーたちを保護してきたから。そして領土を広げて安易に手出しされない国造りができたのは……兄のおかげなんです」  澗宇の顔が今にも泣き出しそうに歪む。 「この『至高英雄』には兄と一緒に参加しました。年の離れた兄でとにかく強い人で……わざと僕に討たれて、敗者となって姿を武将に変えてから、僕を守るために仕えてくれたんです。現実と同じ、誰にも負けない最強の武人――」 「まさか……澗宇の兄は、華候焔なのか?」 「はい。現実でもこちらでもまったく似ていませんが、実の兄弟なんです」  このか弱く純真な少年が、華候焔と兄弟……。  姿が似ていないのは当然だが、雰囲気や言動など共通するものが一切ない。
/568ページ

最初のコメントを投稿しよう!

208人が本棚に入れています
本棚に追加