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華候焔との繋がり
負けたプレイヤーの解放――一瞬、耳障りの良い言葉を並べ、俺を油断させようとしているのだろうかと疑ってしまう。
だが澗宇の澄み切った瞳に力強さを見出し、これが彼の本音なのだと確信した。
本音には本音で返そう。
俺は澗宇の眼差しを真っ直ぐに受け止め、素直な疑問をぶつける。
「領土の規模や抱えている武将の数を考えれば、俺よりも澗宇のほうが総合力は上だと思う。なぜ自ら頂点を目指さないんだ?」
「……頂点を目指すには、僕という人間はあまりに無力なんです。武将の数が多いのは、出来る限り戦いを望まないプレイヤーたちを保護してきたから。そして領土を広げて安易に手出しされない国造りができたのは……兄のおかげなんです」
澗宇の顔が今にも泣き出しそうに歪む。
「この『至高英雄』には兄と一緒に参加しました。年の離れた兄でとにかく強い人で……わざと僕に討たれて、敗者となって姿を武将に変えてから、僕を守るために仕えてくれたんです。現実と同じ、誰にも負けない最強の武人――」
「まさか……澗宇の兄は、華候焔なのか?」
「はい。現実でもこちらでもまったく似ていませんが、実の兄弟なんです」
このか弱く純真な少年が、華候焔と兄弟……。
姿が似ていないのは当然だが、雰囲気や言動など共通するものが一切ない。
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