華候焔との繋がり

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 わざわざ弟のために領主を降り、武将として力を振るっていたことを考えると、兄弟仲は悪くないのだろう。ある程度関わり合っていたなら、もう少し似たところがあってもいいはずだが――。  俺がにわかに信じられずに目を丸くしていると、澗宇は苦笑を零した。 「兄は華候焔という役を演じていますから、ことさら似ていないと感じると思います……僕のために裏切りの常習犯だなんて言われるようになって、それすら『ハクが付いていい』なんて笑い飛ばして……」 「なぜ澗宇のために裏切りを繰り返したんだ?」 「僕の味方を見つけるために直接領主の所へ行って登用され、人柄や強さを見極めようとしたらしいのですが、味方になり得ないと判断して内部から潰したり、僕の領土を攻めたからと寝返ったりしていたんです」  裏切り常習犯の理由が、まさか弟を思ってのことだなんて想像すらできなかった。  俺は何度か目を瞬かせた後、思わず口元を緩めた。 「そうか……焔にも理由があったんだな」  自然と俺の口から漏れた華候焔の愛称。今度は澗宇が目を丸くした。 「兄が誠人さんとずっと離れずにいるから、仲良くされているとは思っていましたが……兄をここまで受け入れてくれる人は初めてです」  話の終わりに澗宇は笑みを浮かべ、安堵したように長い息をついた。
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