同盟成立

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同盟成立

「これなら安心して誠人さんにお願いすることができます」  スッ、と俺から手を離し、澗宇は背筋を正す。  凛とした表情はから、ずっとこの世界で領主であり続けてきた貫禄が漂っていた。 「僕は誠人さんがこの世界で一番の強者――至高英雄になって頂くために、同盟を結びたいと思います。才明さんが話されていた新しい武器を作る素材も、戦のための兵糧も、増援も惜しみません。どうか僕に誠人さんを手伝わせて下さい」  澗宇の表明を聞きながら、俺は夢でも見ているのか? と一瞬思ってしまう。  自らの力で領土を広げ、この世界で唯一の勝者となることを目的とするゲーム内で、自分が勝ち上がることを降りる領主がいるなんて……。  もし澗宇が勝者になりたいと望むならば、華候焔は弟である彼のために戦うはず。どんなに手強い敵がいても、広大で豊かな領土と最強の武将を含む豊富な人材を手にしているなら、澗宇自身が無力でも勝ち上がることは可能だ。  澗宇の眼差しも、漂ってくる空気も、戯れや騙しを感じさせるものではない。本気で俺を勝たせたいと思っているのが伝わってくる。  勝者となれない事情が他にもあるのだろうか?  理由があるから華候焔は勝者にしたい領主を探し、いつかは澗宇と引き合わせたいと考えていたのだろうか?
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