宴の中で

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宴の中で

   ◇ ◇ ◇  談話を終えた後、澗宇にはしばらく移動の疲れを癒してもらい、夕方から同盟を祝う宴が開かれた。  俺の隣に澗宇が座り、にこやかな顔をして料理に口をつけてく。やはり未成年なのか酒には一切手を付けず、柑橘の果汁を加えた芳しい水を好んで喉に流していた。そして、 「こちらの料理は美味しいですね。味付けが優しくて、どれだけでも食べられてしまいます。僕の主城がある地域は香辛料が効いた料理が多くて、最初はなかなか慣れなくて――」  話し相手に飢えていたのだろうかと思いたくなるほど、澗宇は饒舌だった。  まだ領土を広く持てていない俺にとって、澗宇の話は興味深かった。この世界の土地がどれだけあるのか定かではないが、現実の中国規模の広さはありそうだ。土地が広大ならば、気候も変わってくるだろうし、採れる作物も料理の味付けも違って当然だ。  領主として長く君臨し続けている人間の話が聞けて良かったと、俺も澗宇との会話は純粋に嬉しく思う。  ただ、お互いの斜め後ろに控える者たちは、どうも俺たちの交流を喜んでいるようには見えない。  澗宇の傍に控えている侶普は、武器こそ手にしてはいないものの、酒を一滴も飲まず、食事にもほぼ手を付けず、無愛想なまま座り続けている。
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