208人が本棚に入れています
本棚に追加
殺気とまではいかないが、緊張の糸は切らしていない。
何かあれば瞬時に動き、澗宇を守ろうという気配がありありと漂っている。
同盟を結んだとはいえ、侶普は俺のことをほぼ知らないはず。警戒するのは当然だ。
そして俺の傍に控えている華候焔は酒に口を付けてはいるが、戦の宴の時とは違い静かだ。
少し気になって時折見やると、無言で酒の肴を摘まみながら侶普や澗宇に視線を送っている。
元は一緒に力を合わせていた仲なのだから、関係は悪くないはず。
しかし華候焔からは喜びよりも、どこか思い詰めたような気配を感じてしまう。
一度華候焔に声をかけたほうがいいだろうかと考えていると、澗宇が俺に身を寄せ、小声で囁いた。
「あの、誠人さん……少し兄と話をさせて頂いても良いですか?」
「あ、ああ、もちろん」
俺が頷いて見せると、澗宇はゆっくりと立ち上がって華候焔の元へ向かう。
周囲のざわめきで彼らの声は聞こえないが、人懐っこく微笑みながら話しかけた澗宇につられ、華候焔も笑みを浮かべる。
彼らは現実でもゲーム内でも顔を合わせていなかったのだろうか? 久しぶりの再会を喜んでいるように見えた。
何か事情がありそうだと思っていると、ずっと動かなかった侶普がおもむろに俺の元へやって来た。
最初のコメントを投稿しよう!