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語られる英正の動向
互いの腕を伸ばせばぶつかり合う所まで近づいた侶普は、堂々とした佇まいのまま俺に跪く。
これが侶普のギリギリの間合いなのだろう。威圧感が凄まじい。
華候焔に次ぐ猛将だということに疑う余地はない。それに未だ警戒の糸を解かず、主にもしものことがあれば迷わず俺の首を狙いそうな気配すらある。
つられて緊張してしまう俺と目を合わせると、侶普は深々と首を垂れた。
「誠人様、挨拶が遅れてしまい申し訳ありません。我が名は侶普。この度は我が主を手厚くもてなし、同盟を組んで下されたこと、誠に感謝しております」
低く抑揚に乏しい声。実直そうな人柄で、武人としてこうありたいと思わせてくれる将だ。
今、俺の意図を汲む者たちは、俺が切実に澗宇との同盟を望み、彼とのかかわりを大切にしたいと思っていることを理解している。だから澗宇に何かすることはないと確信しているし、もし何かあれば華候焔も動く。
澗宇との関係が良好である限り、侶普が俺たちの敵に回ることはない。
そんな確信があるからこそ、俺は侶普の威圧感に呑まれることなく、向き合うことができた。
「遠路はるばるよく来てくれた。同盟を結ぶことができて、本当に嬉しく思っている」
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