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酔いどれに振り回されながら
「華候焔……澗宇様が久しぶりの再会に喜んでいらっしゃるからと抑えていたが、羽目を外して主を辱める言動を取るというなら容赦はせぬ! 外へ出ろ。いくらこの大陸で一番の猛者でも、酔いどれの身で私に勝てるはずがないだろ」
「侶普、お前とはやらねぇ。一番本気で戦えない奴だからなあ」
言いながら俺の所まで来ると、華候焔がガバッと抱きついてくる。いつになく酒臭くて体が火照っている。
人前で何をしでかすんだ……。
筋肉で重みのある体で俺にのしかかりながら、華候焔は小さくため息をつく。
「俺としてはいけ好かん奴だが、お前を本気で潰したら澗宇が悲しむからな。絶対に戦わん」
「私を見くびるな。お前などに潰されるほど弱くなど――」
「強いから本気出さざるを得なくなるんだって。そしたら加減できねぇし……弟に嫌われたら、俺……暴走してこの世界全部壊すな」
酔っ払いの戯言だと分かっているが、華候焔が言うと冗談に聞こえない。
内心密かに冷や汗を流していると、おもむろに立ち上がった澗宇が俺たちの所へ寄ってきた。
「兄さま、少し酔い覚ましの水を飲まれたほうがいいですよ。そんなに人前で絡まれて誠人様が困っております」
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