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「いいんだよ俺は。こうできるのが俺にとっての褒美なんだし……だよなあ、誠人様?」
唐突に華候焔は俺の体を深く抱き込み、人の顎を掴んで強引に顔を向かせられる。
ニヤリと不敵に笑う顔はいつも通りなのに、細まった目の奥が甘く蕩けているのが見えてしまう。
気づいた瞬間、思わず俺の顔が熱くなってしまう。
このままだと有無を言わせず口付けられて、澗宇たちの前で醜態を晒しかねない。俺は慌てて澗宇の顔を横に向かせながら、腕の中から抜け出そうともがく。
「焔、悪乗りが過ぎるぞ。こういうことは――」
「華候焔殿、今日の宴は関羽様との同盟成立を祝うもの。いくら澗宇様とは知らぬ仲でも、羽目を外して見苦しい姿を見せ続けられるのは困ります。領主様の威厳を地に落とすつもりですか?」
こちらの様子を見かねて来たのか、才明が苦笑しながら現れる。
ムッと不快そうに華候焔は唇を尖らしたが、渋々俺から離れてあぐらをかいた。
「えー、つまんねぇな。祝いの席だからこそ、もっと無礼講でもいいだろー」
「よくありません。親しき仲にも礼儀ありです。それと、これから大切な話を関羽様とさせて頂きますから、華候焔殿にも同席してもらいますよ」
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