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「今日は英正の望みに応えたい。俺にどうして欲しい? 何がしたい?」
「……貴方が、欲しいです。私の望みはそれだけです」
英正は腕の締め付けを緩めると、性急に俺の体を自分のほうへ向けさせ、がっつくように口付けてくる。
人の舌を絡め取り、口内を弄る動きがせわしない。
待ちきれなかったと焦っているようにも感じるが、どこか悲痛さがあるような、俺に縋りついているような気がしてしまう。
何を思っているか分からないが、俺は受け止めるから落ち着いてくれ。
俺は英正の背に手を回し、せわしないキスに応えながら落ち着くようにと優しく叩いてやる。
しばらくして我に返ったように英正の動きが止まり、わずかに顔を離して俺を見つめる。
欲情が抑えられず頬を紅潮させながらも、英正の瞳は色めき立ちながら憂いに潤んでいた。
「誠人様……今日は、加減ができません。貴方を乱したくてたまらないんです。それでも許して下さいますか……?」
一瞬、俺に許しを求めた華候焔の顔が頭をよぎる。
本気を出してもいいと受け入れておきながら、別の男の想いを受け入れてしまってもいいのか? と胸がざわついてしまう。
だが命をかけて役目を果たした英正を無碍にはできない。
対価を物ではなく己で払い続けることに重さを覚えながら、俺はコクリと短く頷いた。
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