●情愛にまどろむ中で

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●情愛にまどろむ中で

   ◇ ◇ ◇  温もりの中、ゆっくりと意識が浮上していく。  まだ寝足りない体が俺のまぶたを重くする。  それでもそろそろ起きて朝の支度をせねばと目を開く。  視界に広がった一面の肌色と強靭な胸筋に、俺は思考を止める。  ……焔、俺を腕に閉じ込めて寝るんじゃない。  寝起きなのに急激に羞恥の熱が集まり、全身がそわそわと落ち着かなくなる。それは体の奥が覚えてしまった甘い疼きに似すぎていて、思わず俺は身悶えそうになった。 「……っ……ふぅ……」  息を逃がして昂りそうな熱を逃がし、少しずつ華候焔の体から自分を離していく。  もう散々抱かれて前も後ろも秘所を曝け出したというのに。雄であることをやめさせられそうなほどの快楽に啼かされ、悦び、自らも貪欲に求めるほどなのに。今のほうが恥ずかしくてたまらない。  心音が速い。  自分のおかしな様子に泣きたくなっている中、ふと華候焔の寝顔が視界に入る。  完全に気を許し、安らかに眠る顔。昨夜は空が白けそうになる頃まで、俺を抱くことを楽しんだ。ちょっとのことでは起きなさそうだ。  もし今、俺が華候焔を裏切って剣を突き立てれば、きっと何も知らぬまま刃を受け入れてしまうだろう。それだけ無防備な自分を俺に晒してくれている。  ……ああ、いつまで経っても俺の頭がおかしいままだ。  俺は離していった体を、わざわざ再び華候焔へ近づけ、首を伸ばして口元にキスを贈る。
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