208人が本棚に入れています
本棚に追加
起こせばただでは済まないと分かっているのに。
まるで強請りながら起こそうとしているような自分に、ますます顔が熱くなった。
早く離れなければ、と布団から抜け出ようとしたが、もう遅かった。
「……逃げるな。誠人の気持ちは分かったから」
いつの間にか目を覚ました華候焔がニヤリと笑い、俺を腕に閉じ込め直して唇を塞いでくる。
まだ体は昨夜の情事の疲れを残しているというのに。
容赦なく舌を絡め取られて、情愛に満ちた口付けに酔いしれていく。
このままだと昨夜よりも華候焔に溺れてしまう――そんな予感に囚われかけた時だった。
「誠人様、やりました! コンパウンドボウの大量生産、完成しました!」
突然部屋の扉が勢いよく開き、才明が慌ただしく寝台まで駆け寄ってくる。
いきなり甘い空気を壊され、俺も華候焔も唖然となって顔を離す。
普段の才明なら、空気を読んでもっと待っていただろうに。それができないほど興奮していることが分かってしまい、俺は顔を綻ばせる。しかし、
「才明、後にしろ……やっと誠人が積極的になってくれたのに……」
俺を深く抱き込んだかと思えば、低く怒気を孕んだ声で華候焔が才明をけん制する。
いくら才明でも華候焔の怒りを一心に浴びたら手足は震え、そのまま固まってしまうだろう。
しかし切望を叶えた才明に恐れなどなかった。
「昨夜はいっぱい楽しんだでしょう、華候焔殿? 次は私の番です」
才明は糸目をニンマリとさせて胸を張る。
「さあ、朝食を終えたら色々と仕込みますよ。楽しみにしていて下さいね、誠人様」
……いつになく才明が強い。
まったく折れない才明に、俺と華候焔はいうことを聞くしかなかった。
最初のコメントを投稿しよう!