208人が本棚に入れています
本棚に追加
「これだけ急に力をつけたら、太史翔以外の領主もなりふり構わず誠人を狙ってくる。暗殺されないための厄除けと思ってくれ」
しっかり考えてのことだったと知り、俺はハッとしてから短く頷く。
どうやら才明と白澤はそのことを理解していたらしく、より密着した俺たちを見ても否定はしなかった。ただ、
「誠人サマに変な虫がつかなくなるのはいいですけれど、特大の変な虫が取りついちゃって大変ですー。外でいかがわしいことはしないで下さいー」
「安心しろ。さすがに外で見せつける趣味はないから」
「えー……信じられませんー」
「俺だけに見せてくれる顔を、他の奴らに見せるなんて面白くないだろ。まあ誠人様が我慢できなくなって俺を求めてくれるなら、その時は応じるしかないがな」
「いかがわしいこと仕掛ける気マンマンじゃないですかー! 誠人サマの名誉のために、それだけは止めさせてもらいますからねー!」
俺を挟んで華候焔と白澤が恒例の言い合いを始める。至近距離でやめてくれ。耳が痛くなってくる。
思わず顔を引きつらせていると、上機嫌なままの才明が肩をすくめて一笑した。
「戯れはそこまでにして行きますよ? あまり遊ばれていると、本日は私が誠人様の褒美を独占することになりますから」
ピタッと華候焔と白澤が身を強張らせ、言い合いを収める。
「……そんなに自信があることを今からしでかしてくれるのか?」
どこか挑発じみた華候焔の問いかけに、才明は大きく頷いた。
「はい。今からお見せしますから、どうか楽しみにして下さい」
ぶれない才明の自信に、俺も目を見張るばかりだった。
最初のコメントを投稿しよう!