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いつの間にかこちらに顔を向けた才明が肩をすくめる。
確かに本気を出したがっている華候焔が、さらに熱を感じさせない戦いをするとは思えない。
本質を読まれて不快に思ったのか、華候焔から小さな舌打ちが聞こえてくる。しかし、
「持て余した分は別で解消すれば良いだけだから、俺は一向に構わないが? むしろ戦で消費する分も全部そっちに回して、どれだけやれるか試してみるのも一興だな」
……やめてくれ。俺の身がもたない。
華候焔が俺で解消したがっている気配を察して、俺は全身を強張らせる。
小さな変化だけで察してしまう華候焔と才明が、俺の様子に気づいて視線を定めてくる。そして互いにフッと理解し合ったような笑いを浮かべた。
「それでしたら近い内に準備致しましょうか?」
「おっ、頼んだぞ」
勝手に決めないでくれ、と言葉にするより早く伝えたくて、俺は小刻みに首を横に振る。
ここで意思表示しなければ本当に実現してしまう。俺の必死の訴えを汲んだように、白澤が俺たちを仕切るように間に入ってくれた。
「誠人サマをからかうのはやめて下さいー! 不当な褒美の搾取は許しませんからー! もし本気でやるつもりでしたら、お二人にずーっと付きまとって説教し続けますからー!」
白澤の気迫と、本気でやりそうな気配を感じて、華候焔があからさまに顔をしかめる。才明も「悪ふざけが過ぎましたね」と眉を潜めた。
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