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新しい武器の威力
しばらくして才明が兵士たちに目配せすると、各々にコンパウンドボウの前に立って矢を手にする。
準備が整ったことを目視してから、才明は俺たちを見回しながら語りかけてきた。
「これより誠人様にこの新たな弓の威力をお見せしましょう。どうぞこちらへ」
手招きされて才明の隣へ行くと、斜面の下に広がる木々の隙間から、わずかながら街道が見える。
才明はそちらを指さし、わずかに首を捻って俺を見た。
「今からこの道に訓練のため、騎馬兵に見立てた木馬を通らせます。どうかその威力をご覧下さい」
「ああ、楽しみにしている」
俺が正直な気持ちを伝えると、才明は口端を引き上げて返事の代わりとする。見て驚いて下さいという心の声がしっかりと聞こえてくる。
ジッと枝葉の向こう側を凝視し――金属のきらめきが見えた瞬間、才明が右手を上げた。
「撃て!」
才明の合図と同時に、矢が一斉に放たれる。
ビュュウッッ!――風を切る音が速いのに、重い。
そして枝葉の妨害を受けても矢の軌跡は曲がることなく、ひたすら真っ直ぐに目標へと向かっていく。
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