新しい武器の威力

3/3
前へ
/568ページ
次へ
 才明は軍師だ。最悪を想定した上での発言なのは分かっている。  だが、その最悪を頭に思い浮かべてしまい、俺の腹に重みが溜まった。 「……そうならないよう、才明は手を打ってくれると信じている」 「もちろんです。領民を危険に晒す隙なんて、絶対に作りませんよ。だからこそこの武器が十分に準備できるまで、こちらからの侵攻は抑えていたのですから」  おもむろに才明が体の向きを変え、俺だけでなく華候焔や白澤も見交わす。 「次の戦は領主を狙いましょう。ここより一番近く、足場が崩れて隙だらけの太史翔を」 「おおっ、良いじゃねえか。喜んでやってやる」  大戦の提案に華候焔が満面の笑みを浮かべる。思い切り戦えることが心底嬉しいのだろう。  半面、俺は喜ぶことなどできなかった。  一つの可能性が頭に浮かんでしまい、むしろ嫌な汗が手の平にじっとりと滲む。  俺が生身ごとこっちの世界に来ているならば――ここで生きている人たちは作られたゲームのNPCではなく、この世界の生身の人間なのではないのか?  本当に俺はこの世界で、命のやり取りをしているのではないのか?  気づいてしまった可能性に、俺は小さく息を呑んだ。
/568ページ

最初のコメントを投稿しよう!

208人が本棚に入れています
本棚に追加