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真実の一端
「俺は誠人に強くなってもらいたい。だから本気で戦えなくなる憂いを取り払ってやろう。ここなら運営のヤツらに気づかれにくい。秘密を話すには都合がいい」
「……なんだって?」
思いがけないことを華候焔に言われて、俺は目を丸くする。
秘密……この世界のことを教えてくれるのか?
どうして焔は知っているんだ?
話を聞く前から疑問が次々と俺の中から湧き上がってくる。
硬くなってしまった俺をジッと見つめた後、華候焔は上体を引いて座り直し、手元の箸を摘まみ上げた。
「食べながら話そう。せっかくの料理が冷めてしまうのはもったいないからな」
「あ……ああ」
促されて俺も箸を手にすると、ぎこちない動きで並べられた料理を口にしていく。
酒のつまみになるように作られているのだろう。全体的に味が濃い。それだけを食べていると口の中がくどくなってしまうが、中華風の白い蒸しパンに挟んで食べると丁度いい。
数口ほど食べ進んだ頃、華候焔が話を続けた。
「運営側もゲームの本筋から離れた享楽の情事まで、逐一監視したくはないからな。ここなら色々と話せる。そのものを言えばさすがに気づかれるが、ぼやかしながらなら大丈夫だ」
話ぶりからすると、華候焔は『至高英雄』の裏を知っているようだ。もしかすると俺や仲林さんが知りたいことを掴んでいるのかもしれない。
緊張で俺の口の中から料理の味が消える。
そんなに力むなと言いたげに、華候焔はフッと笑った。
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