真実の一端

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「ここは誠人のいる世界とは違うが、作り物とは思えないほどよくできている……だがな、所詮は作り物。さっきの女たちを見たか? 誰かひとりでも顔を思い出せるか?」  華候焔の指摘に俺は思わず息を引く。  言われてみれば確かにそうだ。ついさっき見ていたはずなのに、料理を運んでくれた女性たちの顔がまったく印象に残っていない。  さらに言えば華候焔に話しかけてきた女性が微笑んでいたことは分かったが、顔の造形は意識に入ってこなかった。  俺の反応を見て、華候焔が短く頷いた。 「名前のない者は、あくまでこの世界を回すだけの存在だ。生きているように見えるだけで、実際はそうじゃない。ここで命がある者は、名前を持っている者だけだ」  名前付きの者だけが生きている――つまり戦で兵士を率いる将だけが生きていて、他はゲームのデータに過ぎないということなのか?  しかしゲームの中に俺が体ごと入っている状況を考えると、すべてがゲームとは思えない。作り物の世界に生身の人間を招くなんて、いくら技術が発達した現代でも無理な話だ。  得心がいかない俺へ、華候焔はさらに答えを与えてくれた。 「誠人の言いたいことは分かる。ここはすべてが造られた世界じゃない。誠人のいる世界とは違う異世界に、特別な魔法をかけて『至高英雄』の世界にしているんだ。だから名前付きの将の中には異世界人もいたりする」
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