真実の一端

5/5
前へ
/568ページ
次へ
「焔……」 「さあ、話はここまでだ。明日から太史翔の元へ進軍するんだ、料理らしい料理は食べられない。しっかり食事を楽しんで明日に備えるぞ」 「……この世界のことを教えてくれて感謝するが、大丈夫なのか? 何か厄介な事にならないか?」  もう華候焔が現実の誰なのかは察しがついている。そして『至高英雄』の運営に少なからず関わりがあることも。  だからこそ華候焔自ら真実の一端を話してくれたことを素直に喜べない。  少なくとも今回の話は、俺の憂いを取り払うことだけが目的だろうから。もしそのせいで現実の華候焔が追い詰められてしまうなら、俺は自分の弱さを憎む。  そんな俺の心配を汲んだように、華候焔は目を細めながら俺を見た。 「俺は大丈夫だ。遠慮のない戦いをしてもらうための情報提供だ、見逃してもらえる」  強がりでも嘘でもない華候焔の堂々とした態度に、俺は心からホッと安堵する。  ――そして同時に、すべてを明らかにできない華候焔は、俺にとって完全な味方ではない気がして胸が痛んだ。
/568ページ

最初のコメントを投稿しよう!

208人が本棚に入れています
本棚に追加