進軍

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進軍

   ◇ ◇ ◇  朝を迎え、俺たちは北へ進軍した。  太史翔からすでに奪取した城や砦を通過し、本城の手前の城へと攻め込んだのは進軍を開始して三日後だった。  ここを破られてしまえば討ち取られてしまう。その危機感から、太史翔が抱える有力な将たちと大量の兵が投じられた。  規模だけで見れば圧倒的な差がある。  だが俺が手にしてしまったものは、数の差を凌駕する力。 「弓を構え! 右翼の敵旗に向けて……撃て!」  才明の合図でコンパウンドボウの弓隊が一斉に矢を放つ。  広い射程距離と威力を誇る矢は、敵の矢が届かぬ位置から敵隊を射る。  その矢が収まった頃を見計らい、右翼の英正が崩れた敵隊へ斬り込んでいく。  騎乗して敵城へ俺が向かう最中、槍を振るう英正の姿を垣間見る。  槍がしなる度に小さな閃光が走り、武器を交えた敵がバチィッと光が弾ける。どうやら雷獣化する手前になって雷の力を槍に宿し、理性を残したまま戦っているらしい。  また強くなったな、と内心嬉しく思いながら俺は敵城へ駆ける。  城を落とそうと攻める味方と、奪われまいと抵抗する籠城の敵がぶつかる最前線へたどり着く頃。 「誠人サマ、そろそろ華候焔と合流しますよー。準備はいいですかー?」  俺の首を守るようにやんわりと巻き付いていた白澤が、緊迫感なしの間延びした声で俺に尋ねてくる。
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