進軍

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「ああ、頼む。一気に攻め落としてしまいたい」 「分かりましたー。神獣の加護を誠人サマにー」  ぱたり、と白澤が尻尾を動かした瞬間、俺の体を薄い膜のようなものが包む。  肌に触れると膜はすぐに馴染み、かすかな温もりと微光を俺に宿らせた。 「これで守りはバッチリですー。でも名のある将の攻撃は防ぎきれないので、気を付けて下さいねー」 「いつも助かる、白澤」 「……ワタシはこれぐらいしかできませんからー。ご武運をー」  そんなことを言いながら、いざとなれば体を張って俺を守れるよう襟巻き状態になっているのだから、白澤の献身が本当にありがたい。  感謝と労いを込めて白澤の体をポンと叩いてから、俺は手綱を強く握り、体を前に倒して馬の足を速めた。  俺の進軍に気づいた敵兵たちが、討ち取ろうと集まってくる。  顔があるはずなのにぼやけてよく認識できない顔の群れ。  どこまでも現実的なのにあやふやな存在の彼らへ、俺は竹砕棍を振り回し、込み上げる力をそのまま宿らせる。 「炎舞撃――三連……っ!」  技を立て続けに発動させ、炎の渦を三方向へと散らす。  片方の先端を外した竹砕棍は無数の鉄線となって無軌道にしなり、辺りへ炎を広げながら敵を打ち付ける。 「うわぁぁぁ――っ!」 「太史将様ぁぁ……ッッ」  方々から末期の悲鳴が聞こえてきて、俺は思わず顔を歪める。  よく耳を澄ませば声や言葉の種類は少なく、作られたものの名残りが覗く。それでも臨場感は凄まじく敗者の演出に胸が痛む。
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