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「いざ、尋常に勝負!」
太史翔が叫びながら槍を振り回す。
刹那、回転から突風が生み出され、思わず俺は身を引き、左腕で目を庇う。
風は次第に空へと巻き上げられ、俺たちの頭上で大きく育っていく――竜巻だ。恐らく槍の付与能力なのだろう。
気づいた瞬間、俺は竹砕棍を振り上げながら馬を走らせていた。
「させてたまるか……炎舞撃!」
炎を生み出しながら太史翔に迫り、棍の一撃を繰り出す。
大きな技を出すためには時間がかかる。それよりもこちらが速く技を打ち込めば、技を繰り出すのを阻止することができる。
初期の技は大技よりも威力は弱いが、すぐ放てる。
大技を消して、隙ができたところで俺が懐に入って攻撃すれば――。
ガァンッ、と竹砕棍が太史翔の鎧を打ち付ける。
だが音は響けど、太史翔の動きが止まることはなかった。
「良い動きだが、俺の鎧には敵わぬな」
太史翔の唇がニヤリと笑う。
回転していた槍の切先が、勢いよく振り下ろされた。
「吹き飛べ、青龍嵐!」
勢いを強めた竜巻が、俺に襲い来る。
慌てて竹砕棍を前に構えて防御の姿勢は取ったが、風の前では無力だった。
「うわぁぁっ!」
俺の体が巻き上げられ、高く空に舞っていく。
渦に呑まれて激しく身体は回転し、息ができない。
小石がぶつかるだけでなく、かまいたちのような鋭い風も俺を襲い、切りつけてくる。
「誠人サマ、は、ワタシがお守りを……っ」
白鐸が俺から離れまいと身体に巻き付きながら、守りの力を強めてくれる。おかげで傷はなく、ダメージは軽減できている。
しかし息がままならず、少しでも気を抜けば意識が飛びそうだ。そうなれば無様に地に叩きつけられ、呆気なく敗者に堕ちる。
このまま負ければ今までの頑張りは泡沫に帰す。
負けたプレイヤーたちを助けることも、ここまで広げた領地も、大きくなった城も、集まった武将たちも――華侯焔や才明、英正たちの忠誠も、興味も。
失いたくない。
ここで得たものは取り返しのつかないものばかりだが、もう俺の血肉になっている。それを失うということは、自分を失うとことに等しい。
俺は目をわずかに開き、勝機を探す。
しっかりと強く握り込み、竹砕棍を離すまいとする右手。
今にも暴風に持っていかれそうだが、奥歯を食いしばり、どうにか左手を動かして両手で握る。
後は技が終わるのを待つだけ。
息が苦しい。胸が痛みを覚え出す。目の前が点滅する。
限界が迫り来る中、風の勢いが落ちるのを感じた。
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