●覗いた葛藤

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 東郷さんが俺を喰らいつく勢いで唇を貪り、首筋や胸元に吸い付き、痣を作っていく。恋人と甘やかな関係を結ぼうとするような、優しいものじゃない。ただ激しく俺を圧倒する行為に、膝が笑い出してしまう。 「は、ぅ……東、郷さん……ッ……ぁ……っ」  背中を壁に押し付けられ、冷たさに俺の身体が強張る。  それでも東郷さんの荒々しい愛撫に身体が熱くなり、すぐ気にならなくなる。  噛みつくようなキスに溺れそうになっていると、東郷さんの手が俺の昂ぶったものを掴み、扱いてくる。  キスや愛撫は勢いのままだったのに、敏感なそこを弄る指の動きは遅く、しかし確実に俺を快楽で追い詰めてしまう。  昂りの裏を、親指で下から上へと押し上げるように撫でられると、激しくも甘い疼きに呑まれそうになる。  シャワーの粒が肌で弾け、身体を滑り落ちていく感触ですら快感を覚え、目の前が点滅する。  このままでは俺だけが果てるだけ。  ――嫌だ。それだけは。  俺は東郷さんにしがみついていた右手を離し、俺を求める勢いを宿したようにそそり立つ股間のものを掴む。そうして手を上下して扱いていけば、東郷さんの手が俺の動きに合わせて俺を追い詰めてきた。  バスルームは、どちらともつかない乱れた吐息ばかりが響く。  同じような短さの息。熱。悩ましげに溢れてしまう声。  次に話しかけられたのは、絶頂を迎える間際だった。 「もっと腰を俺に近づけて……っ……一緒に……」  東郷さんに言われるまま腰を近づければ、大きな手が二つの昂りを握り込んでしまう。  一緒に扱かれてしまい、俺はたまらずに両腕を東郷さんの首に回してしがみついた。 「あぁぁぁぁぁ――……ッ!」  二つの熱が、どぷり、と溢れる。  絶頂に叫んでしまう俺とは違い、東郷さんは息を押し込めて息を詰まらせただけ。それでも俺たちの精は二つの手と昂りを汚す。  力が入らない。崩れ落ちる――腕が滑り、膝が折れると同時に床へ座り込みそうになる。  しかし東郷さんは俺の腰を掴み、倒れて休んでしまうことを許さなかった。 「誠人、しっかり掴まっていろ」 「は、はい……」  俺が動き出すよりも先に、東郷さんは軽々と俺を抱き上げてしまう。まったく辛さを感じさせない。身長の割には筋肉で身体は重みがあるほうだが……この年で姫でも抱くかのようなことをされるとは思わなかった。  逃げ場のない俺の顔に対し、東郷さんは愛おしげにキスを与えてくれる。  想いが込められていると分かるのに、本心を隠されてしまった気がして、寂しさがよぎった。
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