208人が本棚に入れています
本棚に追加
東郷さんが俺を喰らいつく勢いで唇を貪り、首筋や胸元に吸い付き、痣を作っていく。恋人と甘やかな関係を結ぼうとするような、優しいものじゃない。ただ激しく俺を圧倒する行為に、膝が笑い出してしまう。
「は、ぅ……東、郷さん……ッ……ぁ……っ」
背中を壁に押し付けられ、冷たさに俺の身体が強張る。
それでも東郷さんの荒々しい愛撫に身体が熱くなり、すぐ気にならなくなる。
噛みつくようなキスに溺れそうになっていると、東郷さんの手が俺の昂ぶったものを掴み、扱いてくる。
キスや愛撫は勢いのままだったのに、敏感なそこを弄る指の動きは遅く、しかし確実に俺を快楽で追い詰めてしまう。
昂りの裏を、親指で下から上へと押し上げるように撫でられると、激しくも甘い疼きに呑まれそうになる。
シャワーの粒が肌で弾け、身体を滑り落ちていく感触ですら快感を覚え、目の前が点滅する。
このままでは俺だけが果てるだけ。
――嫌だ。それだけは。
俺は東郷さんにしがみついていた右手を離し、俺を求める勢いを宿したようにそそり立つ股間のものを掴む。そうして手を上下して扱いていけば、東郷さんの手が俺の動きに合わせて俺を追い詰めてきた。
バスルームは、どちらともつかない乱れた吐息ばかりが響く。
同じような短さの息。熱。悩ましげに溢れてしまう声。
次に話しかけられたのは、絶頂を迎える間際だった。
「もっと腰を俺に近づけて……っ……一緒に……」
東郷さんに言われるまま腰を近づければ、大きな手が二つの昂りを握り込んでしまう。
一緒に扱かれてしまい、俺はたまらずに両腕を東郷さんの首に回してしがみついた。
「あぁぁぁぁぁ――……ッ!」
二つの熱が、どぷり、と溢れる。
絶頂に叫んでしまう俺とは違い、東郷さんは息を押し込めて息を詰まらせただけ。それでも俺たちの精は二つの手と昂りを汚す。
力が入らない。崩れ落ちる――腕が滑り、膝が折れると同時に床へ座り込みそうになる。
しかし東郷さんは俺の腰を掴み、倒れて休んでしまうことを許さなかった。
「誠人、しっかり掴まっていろ」
「は、はい……」
俺が動き出すよりも先に、東郷さんは軽々と俺を抱き上げてしまう。まったく辛さを感じさせない。身長の割には筋肉で身体は重みがあるほうだが……この年で姫でも抱くかのようなことをされるとは思わなかった。
逃げ場のない俺の顔に対し、東郷さんは愛おしげにキスを与えてくれる。
想いが込められていると分かるのに、本心を隠されてしまった気がして、寂しさがよぎった。
最初のコメントを投稿しよう!