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「可愛くなくて良いんですー! だってワタシ、神獣ですからー。それに誠人サマが領主としてれべるあっぷしたから、ワタシも進化したんですよー。前より強くなったんですからー!」
白鐸がもふん、もふん、と小さく飛び跳ねながら反論してくる。重量がありそうな見た目に反し、床に衝撃が響かない。どうやら見た目によらず軽いらしい。
でもなんというか、前と話し方は変わらないのに、騒々しさが増したような気がする。
前よりも相手にするのが大変になったような気がしつつ、俺は身体を起こした。
「強くなって、ますます頼もしくなったのか。心強いな、白鐸」
ベッドから身を乗り出し、手を伸ばして白鐸を撫でてやる。心なしか手触りの滑らかさや艶も前より良くなっている。
これは……癒やされる。心が疲れた時に撫で回したい感触だ。
白鐸を撫で続ける俺を見て、華侯焔がムッと唇を尖らせる。
「俺が色々頑張って、散々蕩かせてやっと撫でてもらえたっていうのに……白鐸、後で覚えていろよ」
「……こんなことで嫉妬しないでくれ、焔」
「無理だ。後で素のままで撫でてもらう」
子供のようなワガママを言われて、冗談だろうと笑えばいいのか、分かったと真面目に受け取ればいいのか分からなくなる。華侯焔の目が真剣だから、本気で望んでいるのだろうとは思うが。
そろそろ起きて支度をしなければと、脇に畳まれてあった寝間着に手を伸ばしかける。
フワリ。俺の手が届くよりも前に寝間着が宙に浮き、俺の肩にパサリとかかった。
「さあさあ、身支度のお手伝いはワタシがやりますので、華侯焔は部屋から出て下さいー!」
「お前こそ出て行け、デカ毛玉。誠人は俺が――」
「いやらしいイタズラして、誠人サマをまともに動けなくする気なのは分かってるんですからー! そうはさせませんー!!」
白鐸が叫んだ瞬間、バンッと扉が勢いよく開き、華侯焔が外へ飛ばされてしまう。
すぐに扉が閉じられ、外から「デカ毛玉、入れろ!」と華侯焔が訴える声が聞こえてくる。だが、それも急激に遠ざかり、部屋は静まり返った。
俺は何度か目を瞬かせてから、白鐸を見上げた。
「今のは白鐸の力、なのか?」
「はいー。れべるあっぷしたので強くなりましたー! これで華侯焔から誠人サマをお守りすることができますー」
あの華侯焔をいとも簡単に追い出し、飛ばしてしまうなんて。
……欲求不満で後からひどく抱かれそうな気がしてならないんだが。
褒美以外でも折を見て華侯焔を構ったほうが良いだろうと思いながら、俺は白鐸の身体をポン、ポン、と叩いた。
「気持ちは嬉しいが、やり過ぎると味方同士でいがみ合いになる。だから加減はしてくれ」
「分かってますー。誠人サマが欲求不満にならない程度には控えますからー」
「……そういうことは言わないでくれ、白鐸」
「否定はしないんですねー、誠人サマ」
そんなやり取りをしながら、俺は寝間着に袖を通して帯を結び、身体を清めに向かった。
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