奇襲

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 目的の場所へ到着するなり、白鐸が俺に身体を擦り寄せてきた。 「あー心配です誠人サマー。本当は一緒に行きたいところですが、ワタシはここから出ると消えちゃいますからー。せめて神獣の加護をいっぱいかけますねー」  スリスリ、ぐねぐね、と身体を押し当ててくる様は大型犬のようだ。毛並みもよく、触り心地も悪くない。だが、顔がない。卵型の特大毛玉が甘えるような姿は、やはり珍妙としか思えない。  考えるだけで口には出さずにいたが、華侯焔が俺の心を代弁するかのように呟く。 「本当に加護を与えているのか? どう見ても謎の不気味な毛玉の物体が、奇妙に戯れているだけにしか見えんぞ」 「失礼ですねーアナタは! まあ誠人サマが分かって下されば、それで良いんですけどねー」  ……悪いが、本音は華侯焔と同じなんだ。頑張ってくれていることは分かるんだが。  心の中で遠い目をしていると、ようやく白鐸が身体を離してくれる。  そして芭張と目配せし、蔦が生えていない壁の前に立った。 「では参るとするか。俺の一族の里は、そう遠くない。話が上手くまとまれば、昼頃には戻って来れるだろう」  芭張の説明に才明が大きく頷き、それから俺を見た。 「私たちは誠人様の判断に従いますので、どうかお心のままに動かれて下さい」 「ああ、ありがとう。しっかり見極めた上で、迎えたいと思う」  周りを見渡しながら伝えると、華侯焔や英正も快く頷いてくれる。  後は隣の異世界に行って迎えに行くだけ。  一度行ったとはいえ、やはり未知の部分があまりに多い。今回も無事で済むという保証はない。  緊張を覚えながら踵を返し、壁をすり抜けようとしたその時だった。 「そう何度も行かせないよ。ゲームのバグを利用して強くなろうとするなんて、ズルいでしょ?」  突然見知らぬ声が聞こえたかと思えば、俺と芭張の間を赤い光球が横切っていく。  ――ボウッ! 蔦がない所だけが赤々と燃え、すぐに火が鎮まる。  燃えた後に現れたのは、他の壁と同じような蔦。まさかと思って壁に手を突いてみれば、通り抜けずに硬い手応えが返ってくるだけだった。  異世界を繋ぐ道を閉ざされた? いったい誰が?  俺たちは辺りを見渡す。  見知った姿以外は誰もいない。  ならば上かと仰げば、木の枝に腰掛けて俺たちを見下ろす男がいた。  この世界の将としては線が細く、筋肉の付き方が弱い体つき。細くサラサラとなびく金の長髪。  顔立ちは中性的できれいな顔だ。鋭い目が笑みで和らぎ、どこか楽しげな色を見せている。  中華映画で見たような袖が広い服をまとい、その手には丸い輝石を付けた杖がある。その杖だけは西洋のもので、この世界からひどく浮いているように見えた。
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