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吉報
◇ ◇ ◇
俺たちが澗宇の元から帰還すると、にわかに城下町が騒がしかった。
領主である俺がここを発っていたことは公にしていない。だから俺が戻ってきたことを歓迎するものではない。
その理由は城内に戻り、門の前まで出迎えてくれた顔鐡が教えてくれた。
「誠人様、無事にお戻りになられて何よりよかったですな。しかも今しがた、ちょうど羽勳たちも帰還したところです」
「もしや、尊朔を……?」
「はい。今回の遠征で見事に打ち破ったそうで」
主力ではない戦力で格付け第二位を倒すことができた。
思いがけない吉報に、俺だけでなく華侯焔や才明も驚きを見せた。
「アイツらだけでよく戦えたな! 才明、何か策を授けていたのか?」
「いくつかは授けましたが……まさかこんなに早く攻略してしまうとは」
感心しながら呟く才明に、白鐸がその場で何度も跳ねる。
「ワタシの神獣の加護が届いたおかげですー! 成長したおかげで、遠く離れていても全兵ぱわーあっぷしていたんですよー」
えっへんと胸を張るように楕円形の身体を反らす白鐸を、華侯焔が胡散臭そうに一瞥する。
「そんな話、聞いてないぞ。どうして言わなかった?」
「だって言えばアテにしちゃうでしょー? 油断大敵ですからー」
「本当は成長して間もなかったから、効果があるか分からなくて黙ってたんじゃないのか……?」
「ち、違いますよ! みんなの気が緩まないようにしたかっただけですからー!」
白鐸から動揺が覗く。おそらく華侯焔の指摘は正しいのだろう。白鐸の言い分も分からなくはないが。
いつもの二人の言い合いを眺めていると、才明は腕を組んで小首を傾げた。
「神獣の加護……守りはそれで納得できますが、攻撃はまた違うはず。ここまで早く攻略できるほどの圧倒的な力を、どの武将が持ってというのでしょうか?」
すっきりしない表情ながらも、才明の唇は緩んで明るさが滲み出ている。
英正も嬉しそうに表情を晴れやかにして、仲間の活躍を心から喜んでいる。
ただ一人、この吉報に衝撃を受け、顔をしかめる者がいた。
「尊朔を倒した? そんな、まさか……」
両手首を封魔の縄で縛られ、英正に引かれていた昂命が呆然と言葉を溢す。
そして今にも消え入りそうな声で呟いた。
「人間じゃないヤツが潜り込んでいるのか? 厄介だな」
俺の耳はしっかり昂命の声を拾う。
人間ではない……魔物が俺の配下となり、潜伏しているのか?
だとすれば誰だ? 姿は『至高英雄』の世界に入れば、魔物も人型に変わってしまう。偽りの姿でも隠せない、人ならざる力を持っている者は――。
そう考えた時、一人だけ思い当たる者が俺の脳裏に浮かんだ。
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