本懐を遂げるまで

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本懐を遂げるまで

「合わせ技で、兵を? それなら確かに勝算が――でも、どちらが先に王城を落とすかということになると、やはり兄がいる以上、志馬威に軍配が上がるのでは……」  潤宇の憂いは当然だ。互いの主戦力が入れ違いでそれぞれが王城を攻めれば、技で城を落とすことなど容易い華侯焔が勝る。  本来なら何をやっても叶わない相手。  そもそも王城の規模も違う。防御力という点でも劣り、攻撃力にも差がある。  だが、ひとつだけ俺には光明があった。 「俺が華侯焔と対峙して足止めしている間に、羽勳たちに志馬威を攻めてもらう」 「……っ、兄と、真っ向から戦うなんて!」 「華侯焔は城を落とすことより、俺と本気で戦うことを望んでいる。俺がそれに応え、食い止め続ければ勝機はある」  血相を変えた潤宇を俺は見据える。  もう覚悟はできている。才明や英正も同じくだ。  本当ならば俺ひとりで応えたいが、情けないことにまだ未熟な身。主力である才明と英正の力を借りて、ようやく本気で華侯焔と向き合い、ぶつかることができる。  それがどれだけ難しく、一瞬も怯めないことは理解していた。  潤宇は弾かれたように口を開きかけて、グッと唇を固く結ぶ。  大きく息を吸い、吐き出しながら悲痛さを口から追い出し、表情を引き締めた。
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