本懐を遂げるまで

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「誠人さんの覚悟、しかと受け取りました。ならば僕も覚悟を決めましょう――侶普」 「はっ」  潤宇の呼びかけに応えると、侶普は距離を詰め、傍に控える。  巨躯を見上げる潤宇の眼差しは強く、格付け三位の気迫が漂う。 「この戦いで僕はすべてを使い尽くす。侶普もそのつもりで」 「心得ております。この身も心も、すべては潤宇様のもの……どこまでもご意向に沿って参ります」  彼らもまた覚悟を決めた者。頼もしくもあり、悲しくもある。  俺が勝てば現実を失い、負ければこれから先、兄を自由にしたいという望みが叶わなくなるだろう。  どちらに転んでも潤宇は何かを失うことになる。  ならば共に本懐を遂げたほうがいい。  華侯焔を――東郷さんをこの世界でも、現実でもしがらみから開放したい。  俺が目配せすると、才明は俺の望みを汲んだように頷いた。 「ありがとうございます。お二人の力、大切に使わせて頂きます」  潤宇たちに向かって厳かに拝手し、一礼すると、才明は強気な微笑を浮かべながら告げた。 「では作戦をお伝えしますので、異論がなければすぐに準備をお願いします。早ければ早いほうがいいので」  言われる間も無く、俺は机の上に広げられた地図に近づく。他の皆も円陣を組むように集まり、才明の策に耳を傾けた――。
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