鼓舞の言葉

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鼓舞の言葉

   ◇ ◇ ◇  城の広場に、数千の兵たちが一同に並ぶ。  志馬威の元に送り込む先行隊だ。いくら人材の層が厚く、数多の兵を動かすことができるとしても、唐突に主城の中に兵が送り込まれたとなれば、対応は難しいはず。  俺は城への階段の中ほどに立ち、彼らを見渡す。  階下には志馬威攻めの大将を務める羽勳と、彼を補佐する表涼。それに他の将たちも控えている。  彼らの目はいずれも緊張はあるものの、怖気づいてはいない。  戦場に降り立った瞬間に敵へ斬り込み、その切っ先を志馬威に突きつけようという気概が見て取れた。  ここに残る俺ができることは、彼らを鼓舞することだけ。  大きく息を吸い込み、腹に力を入れ、声に心の芯から込み上げるものを乗せる。 「皆、今日この日まで俺と共に戦ってくれたこと、感謝している」  遠くの者にまで聞こえるよう、声を大きくして伝える。  これだけの人数がいるにも関わらず、雑音はなく、静けさが広がる中で俺の声はよく通った。 「これから俺は、この世界の覇者になるべく志馬威に挑む。負ければ二度はない。すべてを失うか、覇王となるか……もう引き返すことはできない」  一度息をつく。己の鼓動が脈打ち、体内を震わせるのが分かる。
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