怒りと疲労と不気味さと

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怒りと疲労と不気味さと

   ◇ ◇ ◇  ゲームを切り上げて専用のゴーグルを外せば、俺は天井を仰いでいた。  あぐらをかいて座った状態で始めたのに、いつの間にか体を倒してしまっていたとは……。  体を起こそうとした瞬間、あまりの気だるさで驚いてしまう。  まるで全身運動をし続けて疲弊したかのうような状態。とにかく体が重たくてたまらない。  試合で疲れたからか? ――いや、ここまで酷いのは初めてだ。  原因はなんだ?  仰向いたまま頭を抱え、しばらく考え、そして「あ……」と思い至る。 「まさか……さっきまでのアレか……」  つい直前まで、華候焔に延々と抱かれていた。  俺の意思を無視して、体のあちこちの筋肉が悦び、数えきれないほどピクン、ピクンと脈打っていた。何かされる度に筋肉が跳ねて、体の中まで弾けて――。 「――……ッッ」  生々しい感触を思い出してしまい、俺は全身を熱くしながら叫びそうな口を塞ぐ。  ゲームの世界で抱き潰された反動が、こんな形で現実に出てくるなんて。  確かにこれならゲームをし続けても体は鈍らないかもしれない。  だが、もう駄目だ。またこんな目に遭ったら、俺は――。  体にまとわりついてくる恥辱の記憶から逃れようと、何度も首を振って足掻く。  それでも消えるどころか記憶は鮮やかによみがえる一方で、俺の怒りに火がついた。
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