213人が本棚に入れています
本棚に追加
もし俺がゲームをしていなければ、皆と同じようにあり得ないと断言していた。
今だって信じられない――だが、実際に身をもって経験してしまった。あれをなかったことにすることも、夢だったと思うことも、俺にはできない。
俺が知る中でゲームのことを認識しているのは坪田だけ。
夜になる頃には怒りの熱は冷め、焦燥感だけが俺に募った。
有益な情報が何も掴めない。
ゲームのことも、坪田のことも……こんな事態になるなら、安易にゲームへ手を出すべきではなかったと頭を抱えてしまう。
寮の自室へ戻れば、机の上に黒いVRのゴーグルが置かれているのが視界に入り、背筋がゾクリと震える。
「……なんなんだ、これは……っ」
思わずゴーグルを掴み、窓から投げ捨てたい衝動に駆られる。
だが、脳裏にゲームを中断する時に出てきた文字が過ぎり、俺を思い留まらせる。
『中断の場合は、現実時間で七十二時間以内に再ログインしなければ、強制的に敗者となりますのでご注意下さい』
ゲーム内で敗者になれば、相手の奴隷になってしまうと聞いている。
ならばゲーム外で敗者となったら? ――まさか何者かの奴隷になってしまうのか?
考えるほどに怖くなってしまい、俺はゴーグルに背を向けて眠りについた。
最初のコメントを投稿しよう!