夢として見せたもの

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「ならば、聡子のつらさや苦しさも背負う覚悟があるんだろうね。生半可な気持ちや、中途半端な考えで物事と向き合うものではない。君にその覚悟があるのか?」  じいちゃんの低い声が、垣根に隠れている俺の心に届いて刺さる。まるで、優香と結婚する自分への言葉のように感じられた。  その場の空気が張り詰める。  俺も目を見張り、息を飲む。  だが父さんの返事はなかった。  あの父さんが中途半端な気持ちでここに来たとも思えない。人にも仕事にも真面目に向き合う父さんの背中しか俺は知らない。  それなのに、なぜ反論しない――。  「山崎くん⋯⋯」   不安そうな母さんの弱々しい声。   ――どうするんだよ、父さん。  ここまで来て引き下がるのか。  覚悟もないのに来たのかよ!   
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