俺と彼女の分岐点

2/7
前へ
/20ページ
次へ
――ピーンポーン。  相も変わらず、必要以上に大きな音がする。  実家のインターフォンは壊れているのか、年々音が大きくなっている。  来たことを知らせるために一度だけ押して、玄関の引き戸を開けた。 「いらっしゃい~」  よそいきの高い声とこぼれんばかりの笑顔を作った母さんが、廊下の奥から小走りで近付いてくる。 「母さん、こちらが優香さん」 「初めまして。山田優香と申します。本日はお時間をいただきまして、ありがとうございます」 「初めまして。会いたかったわ、優香さん。瞬から聞いていた通りの素敵な女性ね。あら、今日は二人だけなの?」 「あぁ。今日は二人で挨拶したくてさ」 「そうだったの。どうぞ、上がって」  母さんに促されてぎこちなく靴を脱ぐ。  その優香の表情はガチガチに固まっていた。 『リラックス』  目を合わせて声に出さずに言った。  そして優香の背中に優しく手を添える。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

40人が本棚に入れています
本棚に追加