俺と彼女の分岐点

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「父さんは?」 「大丈夫。いるわよ。でも緊張するからって、もう飲んでるのよ。いやねぇ」  母さんは優香を気遣うように小さく笑った。  居間の定位置に背中が見える。  昔はもっと大きく見えていた父さんの背中。 「父さん。来たよ」 「あぁ」  久々に見る父さんの表情は固かった。  今朝見た夢の父さんの姿とだぶる。 「こちら山田優香さん」 「⋯⋯初めまして。よろしくお願いします」 「いらっしゃい。よく来たね」  優香に向ける優しい言葉が有難かった。  ここまで来て反対されることはないだろうけど、俺たちの結婚に対する様々な思いもあるだろう。 「母さんも座って。食事の前に挨拶させてもらいたいからさ」 「はいはい。そうよね」  両親二人とテーブルを挟んだ席に俺と優香がつく。空気の色が張り詰める。
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