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「次に来る時は、娘さんも一緒にね」
「あぁ⋯⋯ありがとうございます」
母さんが掛けた言葉に、優香の瞳からハラハラと涙が溢れた。
優香には9歳の娘がいる。
そう。前の旦那との子供。優衣という。
最近は生意気なことを言ったりもするが、俺の体を気に掛けてくれる優しい子だ。
彼女は大学卒業と同時に籍を入れ、入社して半年で、すでにお腹には優衣がいたそうだ。
しかし出産後に育休から職場復帰しても彼女の顔色は冴えなかった。「何かあったら言って」という俺の言葉に悲しく微笑むだけで。
――優香は離婚していた。
相手の度重なる浮気が原因だった。
社内の人に知らせずに幼子を一人で育てることへの不安を抱き、孤独に押しつぶされそうになっていた。
そんな彼女を放っておけなかった。
「いつでも頼ってよ」と、俺の電話番号を渡したが、半年経っても彼女から電話がかかってくることはなかったのに。
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